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今こそ、水族館へ

先日ニュースで、‟1月にLAで起きた大火事の影響で病気になり保護されたペリカンが、数カ月に渡る治療を経て自然へ還った” という素晴らしいストーリーを目にしました。あの惨事から約7ヶ月、街は“元通り”では全く無いけど、同じく多大な被害を受けた自然界の生き物が、再び元気に羽ばたいて飛び去って行く姿は感動的であり、とてもインスピレーショナルでした。

こういったアニマルレスキューは、常に様々な場所・場面で起きていて、言葉も常識も通じない動物を相手に何カ月も、時には何年も世話をし回復させていく、影のヒーロー達に心から頭が下がります。海に面したLAでは、水族館などがアニマルレスキューの常連。良い機会なので、久しぶりに近くの水族館へ足を運んでみました。

そこで今回は、水族館に行って感じたこと、思ったことを、皆さんにシェアしたいと思います。

Chapter

LAのマンハッタンビーチピア(桟橋)先端には、誰もが無料で入れる水族館が。今回足を運んだのは、この小さな水族館と、ロングビーチにある南カリフォルニアで一番大きいAquarium of the Pacific。

01
水族館の存在意義

皆さんは「水族館」と聞いて、どの様なところを思い浮かべますか?もともと水族館や動物園の始まりは、王様や大金持ちの“コレクション”だったこともあって、「見世物」というイメージがある方も多いかも。ところが今、そんな水族館の “存在意義” が大きく変化しています。

 

青い地球。本来、海の生物多様性は地球全体の8割を占めるほど豊か。その大切な生命の基盤が、この50年間異常な速さで減少しています。科学誌「Science」に「2048年に海から魚がいなくなる」という衝撃的な論文が発表されたのは約20年前のこと。スーパーに行けば豊富な魚介類が並んでいるから実感が湧かないけど、温暖化・汚染・乱獲・開発による環境破壊が続く今、海の中を覗くと、その状況はかなり危機的なのです。

今現在も火事跡が残るLAの海沿い。燃えた大量の化学物質は、全てそのまま海へ。海の生物はその水で暮らし、どうすることも出来ない。広いし見えないから大丈夫だと思いがちだけど、海で暮らす生物は確実に被害を受けている。保護されていたペリカン達も、有害物質を含んだ魚を食べたことがそもそもの原因。
世界最大の動物、シロナガスクジラも絶滅危惧種。火事の後、赤ちゃんクジラも病気になり浜に打ち上げられました。G20のような国際会議に、他の生き物も参加出来たら何て言うのでしょうか?

そんな中で、水族館などの施設がアニマルレスキューに加え行っているのが “種の保存”。絶滅危機種の繁殖・生態調査を行って、環境保全に繋げています。1人でも多くの人が環境の保護・再生について考えるキッカケとなるよう、水族館は「見世物」から「守り・学び・伝える」施設として存在意義を進化させているのです。

まだ、「見世物」を軸にする施設もあるかも知れないけれど、多くは「守る」場へとシフトしている。写真は日頃からレスキューを行うAquarium of the Pacificの病院セクション。施設が何の為に存在しているか?を見極めることが大事。
そしてアメリカでは、施設で働く人の多くがボランティア。彼らは「どんな生き物が、どんな環境で暮らしていて、今どんな状況なのか?」を伝えるために時間を割いてくれている影のヒーロー。

02
行くことで、気付くこと

そういった重要な活動や、彼らのメッセージも、私たちが意識を向けなければ伝わらないし、実際に足を運んでサポートしなければ、彼らに必要な経費は確保できず、保護も研究も出来ません。

今はネットやSNSを使えば環境保全に関わる情報も得ることが出来るし、水族館の活動も調べて寄付も出来てしまう。けれど実際に、目の前にある “命” と触れ合う体験・感覚は、その場でしか得ることのできない特別な感動。

生きている生物を“生で見る・触れる”体感は、画面越しとは全く違う。
感動すると好きになるし、興味が湧く。もっと知ると、守りたくなる。

“水族館の来館者は、その後の “知識・態度” に変化が現れ、環境保全に関わる行動を起こす人が増える”というデータもあるようですが、人は、動物と触れ合い・繋がるだけで、日常生活での意識も行動も自然に改めてしまう、優しい生き物なのでしょうね。

「ビニール?クラゲ?」水族館の展示物の1つで、本当に見分けがつきませんでした。環境汚染を抑え、自然を守れるのは人間だけだと再認識。

03
大切なものを残すために

海の生態系が崩れることは、地球全体のバランスが壊れること。このままだと、私たちは “想像したくない未来” を迎えてしまいかねない。昔ほど “手付かずの自然” に触れる機会のない世代が、持続可能な社会をこれから築いていくためにも、今消えつつある自然を見せてあげるのは、私たちの役目のように感じます。

例えば、生息地が失われ続ける毒ガエル。私たちは、こういった毒から薬を発見していたり、遠くの小さな生き物の恩恵も受けていることを忘れてはいけない。そんな生物と繋がれるのも、水族館ならでは。

“人と動物と自然は繋がっている。全てが調和しているからこそNeutralな暮らしができている。”

そのことを自覚し、その為に時間を費やす影のヒーロー達をサポートし、これからの世代にも伝えていくことが、今の私たちに出来ることの1つかもしれない。

今回、水族館の入場料が物凄く値上げしていて驚いた私。でも “何の為にお金を払うのか?” の意識を変えることが大事なのだと感じました。海や山に行くのは無料だし、本当の自然に触れることが出来るから1番だけど、普段から海と暮らす私でも、水族館での発見・学びは大きく、その存在の大切さを実感。自分の支払った対価が、施設を通してレスキューや環境保全・種の保存に繋がるなら、それは素晴らしい出費。大切なものを残すために、手元に何も残らないお金の使い方も素敵だなと思うのです。

マンハッタンピアの無料水族館は、地域の海を守るため、訪れる人に地元の生物を紹介していますが、壁にずらっと並んだ協賛者たちのお陰で成り立っています。
でも、大きな水族館は寄付や援助だけでは成り立たない。私たちの意識を向けること、あえてオーガニック製品を選ぶように、サポートすることが大事。

まだまだ暑い日が続きますが、皆さんはどの様に過ごしていますか? 楽しいアクティビティーが満載な夏。思い出作りの1つに、久々に水族館へ足を運んでみるのも良いかもしれませんね!

Photos by: SSNRS

Reporter : ROSE

LA在住のNeutralist(ニュートラリスト)。運動、食、遊び、ファッション、日々の生活を通して自身が「心地よい状態」でいられる事を目指しています。
ヨガインストラクター World Yoga Alliance YTT200認定。Yinヨガ認定インストラクター。

Reporter : ROSE