
地球の神秘を伝え続ける写真家、高砂淳二さんが贈る “No Rain, No Rainbow”。海や森の生き物、色とりどりの花々や虹など、自然の魅力を余すところなく捉えた作品と共に、皆さんを新たな冒 険へ誘います。地球の息吹を感じ、美しさを知り、共に学んでいきましょう。
No Rain, No Rainbow
異種間コミュニケーション
スマホが普及して、だれもが簡単に、いつでもどこでも写真を撮れるようになった。街を歩いているときなど、サラリーマン風の男性が街路樹に咲く花の写真を撮っている姿を見かけたりして、ちょっと微笑ましい気持ちになる。僕などは職業柄か、カメラを持つと、いつにも増して心が動くシーンを探す目がONになるけれど(しかもレンズと同じ画角で)、スマホにも、きれいなものや面白いシーンを探す目をONにさせてくれる作用があるかもしれない。
写真をきれいに撮るコツなどありますか?と聞かれることがある。そんな時僕は、対象物をよく観察してみて、と答えることにしている。その被写体の何かに惹かれて写真を撮ろうと思ったはずだから、その惹かれた面がよく分かるように撮ってあげることで、見る人にもそれが伝わると思うからだ。
普段通り過ぎていた草花に惹かれ、それをきれいに撮ろうと思って観察を始めたとき、僕らと草花の間に初めて異種間コミュニケーションが始まる。“花びらってこんなに宇宙的な形をしているんだ~”とか、“なんで君はこんなにいい香りをしてるの?”とか、まるで近所にいる別の地球人と知り合った感覚だ。
そんなことを意識してスマホを通して何かと向き合ってみてもらえたなら、草花とも夕陽とも、今よりもう少し親しくなれるに違いない。
高砂淳二 Junji Takasago
写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。熱帯から極地まで、地球そのものをフィールドに撮影活動を続けている。国内外で写真展多数開催。TBS「情熱大陸」、NHK「スイッチ・インタビュー」をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌等のメディアや講演会などで、自然の大切さ、自然と人間の関係性、人間の地球上での役割などを幅広く伝え続けている。「この惑星(ほし)の声を聴く」「night rainbow」「PLANET OF WATER」など、30冊あまりの著書を発表。ロンドン自然史博物館「Wildlife Photographer of the Year 2022」自然芸術部門で最優秀賞を受賞。海の環境NPO法人OWS(The Oceanic Wildlife Society)理事。
